平成25年度 青年経営者の主張 福岡県大会
福岡県商工会青年部連合会様の動画です。
私が青年経営者の主張大会に参加した時の発表です。
古い寓話(ぐうわ)にこんなお話があります。
とある小さな町の建設現場に、3人のレンガ積みのおじさんがいました。
そこへ、一人の少女がやって来て「おじさん、何をしているの?」と質問をします。すると
一人目のおじさんは、「見ての通りさ、レンガを積んでいるんだ。」
二人目のおじさんは、「ここに教会を建てているのさ。」
三人目のおじさんは、「この町に子供たちが勉強する場所をつくっているんだよ。」と言うのです。
さて、このおじさん達がそれぞれ一人で教会を建てていたとしたら、あなたはどのおじさんが建てた教会にお祈りをしに行きたいと感じますか?
この話は、同じレンガを積み上げるという「仕事」を持っていても、何の為にレンガを積むのかという「目的」が違えばやる気や仕事の結果が変わるということを考えさせてくれるお話です。振り返ってみると、私にとって青年部活動は一人目のおじさんだった私を二人目、三人目のおじさんへと導いてくれるものでした。
私が商工会青年部に誘われたのは5年前。「地元の友達を増やすのには丁度いいか。」くらいの軽い気持ちで誘われるがまま入部します。しかし、安易な気持ちとは裏腹に、先輩方は地域の担い手として様々な事業に真剣に取りくんでいて、私はただ先輩方の指示を待ち、それに従うことしか出来ませんでした。この頃はまさに、親方に言われてレンガ積みをしている一人目のおじさんと同じ、私はその作業にどんな「意味」があるのかを、考えもしないで、与えられた「仕事」をこなすことしかできていなかったのです。
次の年、私は「みのうフロンティア大学」と言う事業に誘われます。それは全国でも珍しいJA青年部との共同事業で、互いの部員から4人ずつ出し合った実行委員が、年に6回の講演会を企画から運営までしています。そこでは職種を超え、世代を超え、所属している団体をも超えて、熱い議論が交わされ、少人数ならではの硬い結束の輪が生まれます。この事業のおかげで青年部活動の楽しさに気付き、次第に「この事業を成功させたい」という気持ちが芽生え、大きくなっていきました。しかし、どんなに意見を出しても、そこで誰かが「それは本当に受講生のためになるのか?」という質問を投げかけます。そしてその質問は私の意見や考え方が、如何に独りよがりで全体を考えていないか、ということに気付かせ何度も私を悩ませました。実行委員の期間が半分過ぎた頃、ある講師の講演の中で3人のレンガ積みの話を聞きます。そして考えました。「この3人は一体何が違うのか。」
「レンガを積んでいる」と言った一人目のおじさんは、何も考えずに親方から与えられた仕事をこなしているだけの人。
「教会を建てている」と言った二人目のおじさんは、教会という名の建物を建てるという「目標」はあるものの、そこに深い思い入れはありません。
しかし、「子供たちが勉強する場所をつくっている」と言った三人目のおじさんには、子供たちの為という明確な「目的」があり、そこからやる気が溢れています。
そうなのです。「目標」や「仕事」は他人から与えられても、「目的」は「自分の力で見出すもの」なのではないのか。そして、三人目のおじさんのような素晴らしい「目的」に出会えたとき、回りがどんな状況であっても、体の内側から力があふれ出してくるのです。
そして私は気付きました。「そうか。成功させたいという「思い」だけじゃダメなのか。」
結局私は2人目のおじさんだったのです。
・・・と気付いたところで、すぐに「目的」が見つかるはずはありません。燻った気持ちを持ちながら、2年間の実行委員が終わってしまいました。
それから1年後、私は始めて青年部役員となり、「みのうサッカーフェスティバル」の担当部会長という大役を預かります。「みのうサッカーフェスティバル」とは、今年で8回目を迎える青年部の一大事業で、九州各地より24もの小学生チームが、2つの試合会場を2日間占有し総当り戦で試合を行なう大きなサッカーイベントです。
部会長を指名されたとき、「この気持ちをぶつけるのは、ここかもしれない」という期待が沸いてきます。しかし、スポーツに疎い上、イベントの運営なんてしたこと無い私にはこの事業を実行するのに、どう動いたらいいのか、部員に何をどう伝えていいのか全くわからなかったんです。しかし悩んでいる間にも期日は迫ってきます。「とにかくやらねば」という一心で部会長の立場を利用し、部員に仕事を投げていたところ、先輩から「そげな風にしたら、誰もついてこんぜ。」と言われハッとしました。私はこれまで、何かをやりたい思いと準備に頭がいっぱいで、目の前の仲間達とコミュニケーションを取ることを疎かにしていたのです。それからは、とにかく時間の許す限り、与えた仕事を一緒にやりながら、自分の思いを一人ずつ伝えていきました。時には酒を飲みながら。時には会議で意見をぶつけ合いながら。時には夜の車の中で夢を語り合いながら。すると、一人、また一人と協力してくれる部員が増え、なんとか準備を終えることができました。
そうこうしながら迎えた大会当日。私たちはグラウンドに川が出来るほどの、季節外れの激しい雨に見舞われ、愕然としました。この事業が始まって以来、初めて中止か続行かの選択肢を突きつけられます。「遠方からのチームはもうこちらに向かってるはず。どげんすりゃえぇん。」悩んでいた私に、「昼にはあがるげな!ラインば引きましょう。子供たちは楽しみにしとるばい!」と地元サッカーチームの方々がカッパと長靴を持ち出し次々とグラウンドの方へ走っていかれます。その行動を見た瞬間、「選手が準備に困らんように、体育館ば開放しよう!」「開会式を遅らせる連絡ば、各チームにお願い!」と叫んでいました。そして、気がつけばスタッフ全員が無我夢中で走り回っていました。まるで、はじめから自分の仕事がわかっていたかのように。
部員のみならず、地元チームにも助けられながら、1時間遅れでどうにか試合開始。予報通り雨脚も徐々に遠のき、泥だらけになりながらも、元気にボールを追い掛ける子供達を見ていると、「子供たちの為にもなんとかして続けていかにゃ。そしてさらに盛り上げていかにゃ。」という思いが湧き上ってきました。そう思い始めたら、やるべきことが見えてきます。まず、続けていく為に減っていく部員を補うこと。そして、運営側も参加者も楽しめる事業にすること。そう決めた瞬間に閃きました。「みのうサッカーフェスティバル」をJA青年部との共同事業にしよう!そうすると、運営の人数も確保出来て、後の世代にも安心して事業を引き継いでいくことができる。そして何より、「みのうフロンティア大学」で、多くの受講生の心を動かしたあの互いの強みを生かした企画力は、参加した子供たちが目を輝かせるような、もう一度来たいと思ってもらえるような、さらに楽しいイベントへと発展させることが出来るはずです。
これが、「私は3人目のおじさんになれたかもしれない」と気付いた瞬間でした。そして今年、JA青年部へ共同事業化の打診をしたところ、「ぜひ一緒にやっていこう」という心強い返事を頂き、「みのうフロンティア大学」が終了する2年後からの開始に向けて着々と準備を進めています。
今思えば去年のあの雨は、そこにいた人を一つにし、誰に言われるとも無く一心不乱に動かしてくれました。それはそこにいた人、みんなを3人目のおじさんにしてくれた恵みの雨だったのかもしれません。
・・・全ては目の前にいる子供たちの為に。
ご清聴、ありがとうございました。
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